症例4:顔面神経麻痺症状

2023年01月04日

顔面神経麻痺:症例報告

患者:50代 女性 Yさん(仮)

主訴:右顔面部の麻痺症状

来院:R4年12月09日

症状:12月6日の夜、寝る前に目に異物が入ったような感じで「まつ毛かな?」と思って、そこまで痛くなかったのでそのまま就寝した。

翌朝、起きると右目がしょぼしょぼして動かない感じがして、歯磨きして口の中でうがいをしたところ、口から水がピューっと漏れたため、「これはなんかおかしい。」と思い、眼科を受診したところ脳外科への受診を促され、紹介状を書いてもらい脳外科を受診した。

MRI検査で脳に腫瘍や血管の異常はないため、中枢からではなくベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)と診断を受ける。薬(ステロイド、抗ウイルス、ビタミン剤)を処方され1週間後の来院を促された。

薬を極力服用したくない思いがあり、2日間は服用し今朝は服用しなかった。

医師からは発症から3日目が症状が一番きつく、そこから1か月で緩やかに戻るだろうと話された。

食事の際にご飯が食べづらく、コップで飲み物が飲めないため、ストローを口の端に寄せ歯で噛んで何とか飲める。

しゃべるのが変な感じがする。

右目が閉じれず、瞼がとにかく重い。口が開きづらい。

耳の裏から顎にかけて痛みがある。

左目もぎゅ~っとしたくなってつらい。

発症からの経過は今日が一番ひどいとのこと。

過去に鍼灸を受けたことがあり、今回ネットでいろいろと調べている中で当院のホームページをご覧になられ、「ちょっとでも早くよくしたい。」と来院された。

【所見】

〈麻痺症状〉

  • 右目閉眼困難(両瞼を閉じようとした時)
  • 右目閉眼不可(右瞼だけ閉じようとした時)
  • 額のしわ寄せ右側はできない
  • 右口角が下垂し、口の右側は開けづらい
  • 右耳の後ろに圧痛がある

〈東洋医学的所見〉

脈診:浮、弦、虚、やや硬い

腹診:季肋部(特に左)、心窩部が硬く、押すと痛む(圧痛あり)。右の帯脈(おへそのラインの側腹部)が張って圧痛あり。

右足下腿前面外側の強い張りがある。(よくここの筋肉をつることがある)

上半身(主に首から頭部)に熱感があり、背部は中部胸椎~下部胸椎横に張りがみられた。

その他、右肩外転時、少し制限があり、つっぱる。(自動運動)

〈随伴症状〉

首の凝り、腰痛、右大腿部外側にしびれ、冷え性。

口が粘る、口が苦い。

【施術】

西洋医学だけでなく鍼灸を並行することで早い回復が見込めること、発症から3日目ということで、まだ症状に変化が起こること(施術後一時的に症状が強くなる可能性もある)をお伝えし、同意のうえで施術に入った。

施術は腹部の緊張を取り、上半身に停滞した熱をさばき、身体の回復力を高める目的で鍼灸施術を行った。

手、足に浅く単刺を行い腹部の圧痛の変化を共有し、麻痺している右顔面部へは浅く置鍼し、右耳の後ろの反応点にも置鍼を行った。

【施術後】

主訴となる麻痺症状に変化はみられなかったが、腹部の圧痛の軽減や肩の動きでのつっぱり感が楽になるなどの変化がみられた。

Yさんは自営業をされていて「お客さんと対面で仕事しているので、お客さんに心配してもらうので、とにかく早く治したい。」というお気持ちがある。

自宅でのセルフ灸も効果的だと勧めたが、自分でやるのは面倒くさいと正直に話してくれた。

さばさばとはっきりとした受け応えで少し鋭い印象にみえるYさんだが、話を聞いてくれて嘘がないお人柄だと感じた。

今後の方針として、できるだけ間隔をつめて施術をやっていくことを共有した。

12月12日(2回目)

前回からの状態は、特に麻痺症状の変化はわからないとのこと。

右目が下がって不快感があり、右耳の後ろから顎のラインにかけて痛むため薬を服用した。右首から肩が凝る。

〈所見〉

腹部の帯脈の辺りは張ってくすぐったい。

少し口角のラインに変化がみられる気がする。(私の印象)

前回より上半身の熱は和らいでいる。

施術は1回目同様の施術に加え、軽くお顔をマッサージした。

12月14日(3回目)

左目をぎゅ~っとしたくなる感じは和らいでいる。

右顔面部の麻痺の変化は感じない。

薬を2~3日服用すると、右大腿部外側にしびれがでる。

主訴の麻痺症状の変化がみられないが、上の熱は和らいできていることから方針は変えず施術を行った。

12月16日(4回目)

麻痺症状の変化は平行線だが、右目の不快感が和らいでいる。

施術は、右耳後ろの反応点への鍼の刺激を強く行った。

12月19日(5回目)

17日の朝から好転してきた。(表情に明るさがみられる)

仕事でイベントを開催した時、お客さんからも「右の目がよくなってきている。」と言われた。

口元がい~っと開きやすくなった。

額のしわ寄せをした時、右の眉辺りが反応している。

右耳の後ろから顎にかけての痛みがなくなった。

12月21日(6回目)

食事の時、口が開けやすくなった。

水もこぼれにくくなった。

右瞼がまだ少しつっぱる。

この後、年末にかけてお仕事がお忙しくなったようで様子をみられることになり、本日1月4日に連絡したところ、「ありがとうございます。お陰さまで25日くらいに麻痺症状もなくなり、見た目の違和感もなく、日常生活も支障なく過ごせてます。」と嬉しい報告をいただいた。

【考察】

今回の症例は、発症から3日目で早期に来院されたことや、施術3回目までは麻痺症状に変化が感じらない状態でも信じて間隔をつめて来ていただけたことで、半月で改善がみられた。

Yさんの症状を改善させたい気持ち、お客さんを大事にされている強い思いを感じました。

どんな症状でも大きい、小さいというのはなく、発症した本人しかわからない辛さ、焦りがあると思います。

ただ、症状はつらいですが、症状は身体からのメッセージだと捉えると症状の見え方が変わるかもしれません。

身体には自然治癒力や恒常性の働きがあり、常に最適な状態にしてくれています。

施術中、Yさんの「お客さんを優先して、自分のことは後回しになっていた。」と振り返られていた言葉が残っています。

当院では施術を通してご自分のための身体を休める、安心できる時間を提供しています。

楽になった身体と心でやりたいことや臨む未来に向かっていってほしいです。

そして、自分でも整えていきたい方や今よりパフォーマンスを上げたい方は、呼吸レッスンや個人レッスンでご自分と向き合う時間を提供しています。

当院はあなたの臨むものに応じてサポートいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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